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デジタル化に思うこと。

けたろーです。

最近は、何でもかんでもデジタルに移行しつつありますね。 家電もそうだし、クルマもそう。 通信機能とか、AI機能をもったやつとか。 工場の中でも同じくです。 もっとも、デジタル化できない分野もあるけど、それでも、デジタル(数値化)するという波は拡がってるみたい。

というわけで、今日の話題。

デジタル化の波。

こんなものまでデジタルなの? っていうくらい、どんどんすそ野が広がってる感を受けてます。 気が付けば、IoT やら AI やら 5G やら…  先進技術と言われてる技術がどんどん開発されてる。

ボクが働き始めた90年代初頭では、まだ社内インターネット(イントラネットと呼んでた)も珍しい時代。 ボクが在席していた会社は、アメリカとの合弁だったので、海底ケーブルのネットワークを使ってアメリカとやりとりをしていました。

社内にはコンピュータルームがあって、アメリカとデータのやりとり。 電子メールも使ってたし、当時のことを思うと最先端だったと思う。 というか、全部、アメリカのシステムだったから、アメリカが先端だったのだと思います。

1995年にWindows95がリリースされて以降くらいかな、インターネットが一般的になりだして、一般家庭でも〝デジタル化〟の波がどっと押し寄せてきた。 で、現在に至ってる感じかな。

デジタルは便利?

では、なぜデジタルがいいのか? ちょっと考えてみました。 

身近で言えば、うちの工場の中のこと。 金属を加工するフライス盤という加工機があるのだけど、うちは汎用のフライスをもってて、そこにはデジタルスケールを付けてます。 デジタルスケールがない場合は、ハンドル横の目盛で加工時の削り代を設定するのだけど、これがまたメンドクサイ。 1目盛でどれくらい進んでとか、何回まわした? だとか、いちいち、目盛の数を覚えて、位置を把握する必要があるんです。

でも、デジタルスケールを使えば、数値が一目でわかるし、基準点(ゼロ)を簡単に指定できるのでかなり便利になってます。 これは同じものを作る場合にもすごく有効で、デジタルの数値を読むことで繰り返しの精度も比較的あがるんです。 目盛の場合だと、目盛の線上に合わせたつもりでも多少の揺らぎがでてしまうから、繰り返し精度という面ではちょっと難しい。 そもそも、デジタルスケールを付けてることで、作業へのストレスがかなり減ってるのは事実です。

もう一個、ボクの身近な例で言えば測定工具かな。 ノギスっていう厚みを測る工具があるのだけど、あれもデジタル式のがでてて、今やデジタルのが一般的になってるみたい。 しかし、デジタルになって、アナログのノギスが使えない(バーニアを読めない)人もいるんだとか。 ボクは、アナログの方が好きなんだけどね。w

印刷業界の話し。

そうそう、知り合いのラベル印刷をされてる会社の社長さんと話したときのこと。 その中で興味深いことを聞いたことがあります。

デジタルにすれば、
版(ハン)がいらないから良いんだよ!

実際、印刷の業界はデジタルのお陰で大きく様変わりしています。

ボクが知る限り、とりわけ、印刷業界ではデジタル化の革新が著しいなと感じてます。 こと、パソコンが普及しだして以降は、加速度的に早くなっているみたい。 

版がいらないのは革新的なこと。

その昔、ボクが小学校の頃・・・だから、ン十年前。 その当時は今のようにパソコンで書類を作って、プリンターで原本をプリントアウトしてコピーしてというのではない時代。 ワープロ(ワードプロセッサのこと。)が登場する少し前の時代でした。 ワープロを知ってる世代もいなくなってるのかな。w

おぼろげながら覚えているのだけど、学校には確か印刷室みたいな専用の部屋があって、先生が手書きで原稿を書き、そこから版をおこして、それを使ってガリガリと印刷するという感じ。 紙も今のようなコピー用紙ではなく、藁(わら)半紙。 むろん、カラフルではなく、インクは黒のみ。 時に、インクで汚れてたりして・・。笑

あと、印刷に関連して言えば、『ぷりんとごっこ』という器材。 スクリーン印刷を簡易的に、且つ、誰でもつかえるように手軽にした器材があって、それで年賀状などをつくってた。 色つきのインクを使えば、ある程度、カラフルにできて、同じものを何枚も作る場合にすごく便利だったよ。 

印刷業界で考えると、活字を並べて版を作って、印刷機にセットして… 活版印刷ができてから、印刷の仕事が一気に変わったと言われてますよね。 産業革命の頃の話しは、学校の授業でも習ったはず。w

カラー印刷になると、多色刷り(※)になるので、版ずれが起きないように微細な調整をしながら… とにかく、かなりの技術が必要で、印刷工と言われる職人さんたちが機械の微調整を行って印刷にあたるというのが主流でした。(むろん、現在でもその手法は残っています。) ※多色刷り:2色以上の色を使って印刷を行うこと。

機械に印刷の原本となる「版」を取り付け、インクを塗布して、そこに紙を通して印刷を行う。 口で言うのは簡単なのだけど、紙と版の位置が少しでもずれると、『ぶれた』印刷になってしまう。 また、版は恒久的に使えるものではなくて、時に洗浄したりといった作業が必要になってきます。

それが〝デジタル〟に置き換わると、版そのものが要らなくなるので、洗浄もいらないし、作り変えも簡単にできるのです。

オンデマンドな時代へ。

デジタル化によって、もうひとつ革新的なことがあって… それは、【オンデマンド】ができるようになったということかな。 オンデマンドとは、ユーザーの要求に応じて、直ちにサービスが提供できるという体制とか仕組みのこと。

インターネットを通じてデータを入稿すれば印刷できるというサービスがでてきて久しいのだけど、印刷業界で言うオンデマンドとはそういった環境での印刷のことを指してます。

版がいる場合には、原稿を元にして〝物理的〟な版を製作する必要があります。 つまり、『今すぐ、印刷して欲しい』と言っても、必ず版を製作する時間が必要だというわけです。 それに加えて、版を印刷機にセットして、調整してと言う作業も必要になってきます。 

版がいらないということは、端的に言えば、そういった物理的な作業が一切いらなくなるというわけ。

〝版〟がいらないので、版の製作に関わる物理的な材料代も加工等の作業代もコストはゼロ。 機械の面で言えば、版を機械上にセットするという作業が不要で、また、機械上で版を使用しないので印刷後の版の洗浄や保管といった管理作業などもいらなくなります。 つまり、版にまつわる諸々が不要になり、かなりのコストが削減できるというわけです。

だから、ああいった比較的リーズナブルな印刷が可能になって、加えて、原稿をデータで扱えるようになったことで、データさえあればどこからでも印刷サービスを受けれる環境になったというわけです。

デジタル化に伴う機械側の進化。

デジタル化に伴って一番変わったのは機械そのものだと言えます。 …いや、むしろ、デジタル化で機械が進化したから、様々なサービスが展開できるようになったという見方もできるんじゃないかな。

引き続き印刷業界の話をすれば、その昔は、インクの色とか、印刷具合とか、さまざまなパートで専門に校正する人がいたと聞きます(今もおられると思いますが・・)。 印刷専門の技能資格もありますよね。

ちなみに… うちの親父は、その昔ラベル用の印刷機の製作に携わってたので、印刷機械に関する事がらをちょくちょく聞いたことがあります。 機械にはインク壺があって、そこにインクを入れて、定量出すような機構を作ってだとか。 その調整には、ほんと修練度が必要な機械でだったようです。 今でも現役で使ってるところがあって、版の切り替えがなく、同じ版を使って何枚も同じものを大量に刷るという場合には、すごく有効な機械なんだとか。

今は印刷機械に対する技能というより、デジタルデータを編集し、校正し、セットするような技術が主流になってきてるそうです。 印刷時のインク量も自動制御だし、インクの調合も、以前のように物理的にインキを練り合わせるのではなく、パソコン上の数値をいじって合わせるようになっているらしいです。 

つまり、デジタル化に伴って、作業そのものが一変してきてます。 

余談。 考え方の差がもたらすもの。

そうそう、前述の社長さんから聞いた話なのですが、興味深いことを言われてました。 ある展示会で、印刷機で刷られたサンプルの印刷物をみて、驚いて、そのメーカーの人に聞いたそうです。

これ、最初と終わりで印刷の具合が違うんだけど? どうなの? 
均一じゃないやん?

すると、そのメーカーの担当からこんな答えが返ってきたそうです。

あなたは、この印刷物を何千枚も買うのんですか?
数百枚、数千枚も買うのであれば色の違いもわかるのだろうけど。
違いますよね? なら、比較のしようがありませんよね? 

という予想外の驚きの返答があったそうです。 ちなみに、その機械は海外のメーカー。

これは、品質に対する考え方や捉え方の差に起因していて、日本の考え方と海外での考え方は全く違っているという典型的な例ですよね。 

例えば、〝1万枚刷ったとしても、その1万枚が、全て均一で均質な印刷具合であることを求める。〟 というのが日本人の考え方。 一方の海外では、〝1万枚刷ったとしても、その全部をいちいち比較してみる人なんていない。 だから、多少の差がでても全く問題ない。〟という考え方。 

まぁ、根柢には日本人の細かさ(よく言えば繊細。 悪く言えば神経質)があるんだろうけど。。。笑

確かに、海外の考え方の方が合理的で妥当だとも思えます。 デジタル化に伴ってこういう考え方になったというわけではないとは思うのですけど、多少はデジタル化の影響を受けているのかなと思ったりもします。

どういうことか? というと…

デジタル化による作業の簡略化。

デジタル化により、処理の内容が数値で表現でき、そのため今まで〝あいまい〟だった処理が明確になり、誰でも同じ処理ができるようなりました。 それが、前述のような結果を招いてるのかなと思われるのです。

例えば、以前までは〝青〟を印刷する場合、Aさんが表現する〝青〟とBさんが表現するそれでは、インクの調合具合や機械への調整の仕方での差によって、風合いなどが微妙にが異なるという状態が生まれていました。 でも、デジタル化によって、数値による〝明確な〟処理が行われるため、人の感性による表現の差はなくなります。

AさんでもBさんでも差異がなくなるのです。 つまり、誰がやっても同じ結果が得られるという環境が生まれます。 昔のような職人的で習熟度を伴うような技術が要らなくなっているということです。

前述の件で言えば、官能的な品質は別にして、〝数値〟によって印刷が行われるため、始めと終わりで色目が変わったとしても〝数値レベル〟では同じ物だという(言い張る)ことができるでしょ? w

デジタル化はいい? それとも悪い?

印刷業界のみならず、例えば、自動車でさえ、デジタル化が進んできている現状を考えれば、一般家庭でも、むろん、工場でもこれからは加速度的により一層進んで行くのは間違いないです。 

とりわけ、工場でのデジタル化は、もっと加速していくのかなとも思えます。 現状を知る限り、図面データをとりこんで、材料をセットすれば、自動的に加工してくれるような環境が整いつつあります。 3Dプリンターなどもその一種ですよね。 

データさえあれば、どこでも加工ができる環境が整ってきています。 これが意味するところは、日本でなくてもどこでも大丈夫だということ。 加えて、数値で判断するので、ある程度のレベルなら機械が全て処理してくれます。 職人という熟練者が不要になるわけです。 それに加えて、少子高齢化での人員不足。 デジタル化していけば、誰でも作業ができるようになり、スタッフ不足の解消にもつながるというわけです。

また、日本に比べると諸外国の方が〝デジタル化〟への恩恵を受けやすいきらいがあるように思います。

どういうことか? というと、乱暴な言い方になるかもだけど、デジタルへの対応はパソコンがあれば実現できる。 職人のような過去の蓄積は、ほぼ不要。 誰でも習得でき、誰でも簡単に実践できるという環境がデジタルの世界かなと。

一方の日本は、古来より職人の国でもあり、フィジカル面での卓越した技術を持っています。 それらの技術は、過去からの体験とか経験とか、積み重ねの上に成り立っていて、諸外国ではそういった環境は非常に稀です。 東南アジアなどでは、特に…。 逆に言えば、デジタル化としての土壌を考えると、日本より諸外国の方が整いつつあります。 

なんでか? パソコンさえあればできるというのが一番の理由かなと思えますね。 要は、参入障壁が低いんです。

バランスが大事。

デジタル化の流れについて言えば、人の仕事がなくなってしまうのではないか? とそれを危惧したり、悲観視する声もありますよね。 でも、反面、デジタル化できない分野もあるわけです。

例えば、伝統工芸などがそう。 

デジタルは画一的なものをつくるという面では非常に有効な手段なのだけど、微妙な風合いは、やっぱりアナログにはかなわない。 アナログの〝揺らぎ〟が、独特の味わいや風合いを出してくれる。 なので、アナログでしかできないことを、よりよく、もっと成熟させていくことも重要かなと思います。

デジタル化していけば便利になる反面、その真逆に不自由に感じることも必ず存在するわけです。 だからこそ、重要なのはそれとどう向き合い、どう活用するか? のだと思います。 結局のところ、どうバランスをとるか? ですよね。


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